
そもそも、贈与ってなに?
贈与とは、無料で財産をあげますという片務契約であり、実際にその財産を引き渡さなくても当事者間の合意のみで成立する諾成契約のことです。
片務契約:相手に対価を何も要求しない契約のこと。
諾成契約:当事者間の合意のみで成立する契約のこと。
- 贈与の目的物を与える人・・・贈与者
- 贈与の目的物をもらう人・・・受贈者
と言います。
贈与のポイント
- 口頭での贈与・・・引渡しがされていない分については各当事者間が撤回可能。
- 書面での贈与・・・相手方の承諾がなければ撤回不可。
- 夫婦間での贈与・・・第三者の権利を害しない限り、婚姻中、いつでも夫婦の一方から取り消すことが可能。
原則として、贈与者は贈与の目的物に瑕疵があることを知らなかった場合や、不存在について受贈者に対し責任を負いません。
贈与には4種類ある!

① 定期贈与
定期贈与とは、贈与者から受贈者に定期的に給付する贈与のことです。
贈与者または受贈者が死亡した場合は、その効力を失います。

② 負担付贈与
負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負わせることを条件にした贈与契約のことです。
受贈者が債務を履行しない場合は、贈与者が負担付贈与契約を解除することができます。

③ 停止条件付贈与
停止条件付贈与とは、所定の条件を満たすことで効力が発生する贈与契約のことです。
条件を満たすまで効力は停止しています。

④ 死因贈与
死因贈与とは、当事者間の合意に基づき、贈与者の死亡によって実現する贈与契約のことです。
贈与者が死亡するまで、効力は停止していて、遺言で撤回することも可能です。
死因贈与については、贈与税でなく相続税の対象となります。

贈与税とは?
贈与税とは、個人から財産を贈与された個人に課せられる税金のことです。
ココに注意
- 法人が個人から贈与された時・・・法人税
- 個人が法人から贈与された時・・・所得税
これらは贈与税の課税対象ではないのでご注意ください。
PTA・町内会・同好会などの人格のない社団・財団法人や持分の定めのない法人は個人と見なされて、贈与税がかかることがあります。
贈与税の納税義務
- 受贈された時に日本国籍を持っている人・・・受贈した国内外の財産に対して贈与税の納税義務がある
- 受贈された時に日本国籍を持っておらず、日本国内に住所もない人・・・受贈した日本国内の財産に対してのみ贈与税の納税義務がある
贈与税の課税方法は2つ!
贈与税の課税方法には、
- 暦年課税
- 相続時精算課税
の2つのうち、いずれかを選択して課税されます。
贈与者事に、受贈者ごとに、相続時精算課税か暦年課税かを個別に選択することができます。
暦年課税とは?
暦年課税は、1月1日から12月31日までに受けた贈与財産の価額を合計して、贈与の受けた年の翌年2月1日~3月15日の間に申告と納税を行う課税方法です。
- 納付・・・受贈者の居住地を管轄する税務署長に申告書を提出し納付
- 納税・・・申告期限までに税額の全てを金銭で一括納付(物納は不可)
- 延納・・・贈与税額が10万円超で、納期限までに金銭で納付することが難しい場合、担保を提供することで5年まで延納可能
- 基礎控除額・・・110万円。贈与財産の合計額が110万円を超えた場合に申告義務が生じる。(110万円以下は非課税、申告不要)
複数人から贈与を受けた場合・・・
1年間で複数人から贈与を受けた場合、贈与財産の合計額から基礎控除額を控除して、贈与税額を算出する必要があります。
受贈者が贈与税を納付しなかった場合・・・
受贈者が贈与税を納付しなかった場合は、贈与者が1年の贈与税額のうち、贈与財産の価額に対する部分の金額について、贈与財産の価額相当額を限度として、贈与税の連帯納付義務を負うことになります。
しかし、贈与者ではない受贈者の配偶者や親族には連帯納付義務はありません。
相続時精算課税とは?
相続時精算課税とは、贈与時点の贈与税を軽減し、相続が発生した時に贈与分と相続分を合算して相続税を支払う制度のことです。
相続時精算課税制度の適用を受けて贈与を受けた財産は、相続時に相続人として財産を取得しない場合でも、相続を放棄した場合でも、相続税の課税価格に加算されます。
相続時に合算することになる贈与財産は、贈与時点で時価が計算されます。
贈与財産の種類・階数・金額に制限はありません。
相続時精算課税の適用対象者
- 贈与者・・・贈与年の1月1日時点で満60歳以上の父母と祖父母
- 受贈者・・・贈与年の1月1日時点で満20歳以上の推定相続人である子と孫。
養子・代襲相続人は含むが、養子縁組前の贈与は適用不可。
所得制限なし。
相続時精算課税の手続き方法
贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を居住地の税務署長に提出する必要があります。
相続時精算課税の特別控除額
贈与税の申告は必要となりますが、贈与財産の合計2,500万円までが非課税となります。
非課税分を超えた贈与額には、一律20%をかけた額が課税され、課税された贈与税分は、将来相続が発生した時に支払う相続税から控除されます。

相続時精算課税を選択後、同一の贈与者からの贈与については、暦年課税を選択することはできなくなります。
贈与時の贈与税額が相続税額よりも上回っている時は、差額が還付されます。(暦年課税では還付されない)
贈与税の課税財産とは?
贈与税の課税対象には、
- 本来の贈与財産:実際の贈与によって取得した、現金・預金・有価証券・不動産・貴金属など
- みなし贈与財産:贈与によって取得した財産ではないが、実質的に贈与と同様の性質を持つ生命保険金・低額譲渡・債務免除
の2つがあります。
みなし贈与財産となるのは?
生命保険金とは?
契約者ではない人が受け取った保険金は贈与税の課税対象となります。
例)契約者:父、被保険者:母、保険金受取人:子ども
低額譲渡とは?
個人間で時価と比較して、特に低い価額で財産を譲り受けた場合の差額は贈与税の課税対象となります。
債務免除とは?
借金を免除してもらうと、その免除金額が贈与とみなされます。
しかし、債務免除益のうち、債務を弁済することが難しい部分の金額は課税対象外となります。

- 親が所有する土地の名義を、対価なく子どもへ変更した場合の土地。
- 個人間で譲渡された営業権(経済的価値があり、金銭に見積もれる場合)
- 夫名義で住宅ローンを組んで購入した自宅を夫の単独名義としてローンの返済を行った場合の妻の返済分。
- 夫婦間、親子間で無利子の金銭貸与を行った場合の利子相当額(少額の場合除く)
- 父が委託者である信託について、子どもが適正な対価を負わずに受益者となった場合の信託受益権。
贈与税の非課税財産とは?

- 一般的に認められる額の祝金、香典、見舞金、贈答など
- 通常必要とみなされる額の扶養義務者から扶養家族への生活費、教育費。
- 法人から個人への贈与(給与所得や一時所得の対象)
- 相続開始年に、被相続人から受けた贈与
- 離婚に伴う慰謝料や財産分与(社会通念上相当な範囲内の場合)
- 特定障害者が受け取る信託財産である特定贈与信託(上限6,000万円)
- 親子間で土地を使用貸借する場合の借地権相当額
贈与税の計算方法
贈与税額の計算方法
- 課税価格を計算
課税価格=(本来の贈与財産)+(みなし贈与財産)-(非課税財産) - 基礎控除額を引いてから、贈与税率を掛けて贈与税額を計算
贈与税額=(課税価格-基礎控除110万円)×速算表税率-速算表控除額
贈与税の速算表
- 一般贈与財産用(一般税率)
- 特例贈与財産用(特例税率):祖父母・父母から、20歳以上の子・孫などへの贈与
出典:国税庁
個人から負担付贈与を受けた場合の課税価格は、【贈与時の相続税評価額から負担額を控除した額】となります。
例)不動産の場合 贈与時の通常の取引価額-負担額
贈与税の特例
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除とは、配偶者から贈与を受けた場合、基礎控除とは別に最高2,000万円までの贈与額が非課税になる特例のことです。

贈与税の配偶者控除の条件
- 婚姻から贈与日までの婚姻期間が20年以上である
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出する(贈与税額0円でも提出が必要)
- 居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与で、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も居住し続ける見込み(居住用家屋のみ、または敷地のみの贈与でも適用可)
- 過去に同一の配偶者からの贈与で特例を受けていない(1度のみ適用可)
贈与税の配偶者控除を受けると、控除額は基礎控除と併せて最高2,110万円となります。
贈与者が贈与した年に死亡して、相続を開始した場合でも、所定の要件を満たせば適用を受けることができます。
通常の贈与では、贈与者が贈与後3年以内に死亡すると贈与財産は相続税の課税価格に加算しますが、相続開始前3年以内に生前贈与された財産でも、配偶者控除に相当する部分は相続税の課税価格に加算されません。
住宅取得等資金の贈与
住宅取得等資金の贈与とは、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定金額が非課税となる特例のことです。
住宅取得等資金の贈与の適用対象者
- 贈与者・・・直系尊属(父母、祖父母。配偶者の直系尊属は適用不可)
年齢制限なし。 - 受贈者・・・贈与年の1月1日時点で満20歳以上で、贈与を受けた年の合計所得が原則2,000万円以下の人。
- 住宅の条件・・・取得した住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下
住宅取得等資金の贈与の非課税限度額
住宅取得等資金のうち家屋の取得日等の契約締結日によって、贈与税の非課税限度額は変わってきます。
※省エネなど住宅:断熱、一次エネルギー消費量、耐震、免震等について、一定の省エネ基準を満たしている住宅のこと
住宅取得等資金の贈与は、暦年課税の基礎控除110万円、または相続精算課税の特別控除額2,500万円のどちらかと併用することができます。
受贈者1人につき1回だけ適用可能で、贈与者は複数でも可能となります。
住宅取得等資金の贈与の適用によって、贈与税額が0円となっても贈与税の申告書を提出する必要があります。
通常の贈与では、贈与者が贈与後3年以内に死亡すると贈与財産は相続税の課税価格に加算しますが、住宅取得等資金の贈与が適用されて非課税になった金額は、贈与者が贈与後3年以内に死亡した場合でも、相続税の課税価格に加算されません。
教育資金贈与の特例
教育資金贈与の特例(教育資金の一括贈与に係る非課税措置の特例)とは、直系尊属から教育資金として金銭の贈与を受けた場合に一定額が非課税となる特例のことです。
教育資金贈与の特例の適用対象者
- 贈与者・・・直系尊属(父母、祖父母。配偶者の直系尊属は適用不可)
- 受贈者・・・満30歳未満の直系卑属(子・孫)
受贈者が在学や教育訓練中などの場合は30歳以降40歳まで継続可
2019年4月以降の贈与について、前年の合計所得金額が1,000万円超の受贈者に対する贈与は適用対象外となります。
教育資金贈与の特例の非課税額
- 学校などに支払う教育費用(入学金や授業料など)・・・1,500万円
- 学校以外の教育サービス費用(塾、レッスン、通学定期、留学渡航費用など)・・・500万円
23歳以上30歳未満の受贈者の場合、教育訓練給付金などに限定される
①と②を合計して最大1,500万円が非課税額となります。
受贈者が30歳になった日に教育資金に充当していない金額が残っている場合、残額はその年の贈与税の課税対象となります。
教育資金贈与の特例の適用によって、贈与税額が0円となった場合でも贈与税の申告書を提出する必要があります。
結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税措置の特例
結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税措置の特例とは、直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合、一定金額が非課税となる特例のことです。
2019年4月以降の贈与について、前年の合計所得金額が1,000万円超の受贈者に対する贈与は適用対象外となります。
結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税措置の特例の非課税額
受贈者1人につき1,000万円まで
結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税措置の特例は、住宅取得等資金の贈与税の非課税、教育資金贈与の特例との併用が可能です。